日経産業新聞の連載「VB経営AtoZ」代表岩佐による第2回を掲載しました


日経産業新聞の連載コーナー「VB経営AtoZ」で弊社代表取締役の岩佐による寄稿第2回を、日経産業新聞の許諾をいただき転載いたします。本連載は5週おきに掲載され、次回の紙面掲載は2月18日の予定です。

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日経産業新聞連載「VB経営AtoZ」


takuma家電、汎用部品で設計可能
信号デジタル化で簡単に

前回は、1カ国で100台しか売れなくても、100カ国で売れば1万台のビジネスになる、という弊社のグローバル・ニッチ戦略についてさわりのところをお話ししました。
話の大筋はこうです。家電が従来よりも「簡単に」「社外の工場で」「小ロットで」作れるようになったことで、開発費を抑えられるようになった。また、世界各国に「簡単に」「すばやく」製品情報を伝えて、販売チャネルを構築できるようになった。これにより各製品ごとの1カ国あたりでの損益分岐点となる販売台数が少なくなった、という話です。

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 今回は「簡単に作れるようになった」背景である家電のデジタル化について、電子部品の観点から深掘りしてまいりましょう。
2000年を境に、デジタル家電という用語がさまざまなメディアで使われるようになりました。デジタル家電という言葉の本質は、家電内部での信号処理がデジタル化されたことを指すのですが、従来アナログが中心であった信号処理がデジタル化されたことで家電業界全体に起きたことは何だったのでしょうか。
まず誰にでもわかる例から。アナログ時代はカセットテープの品質が音質を分けましたが、デジタル時代は高品質なSDメモリカードでも低品質なSDメモリカードでも保存されたデジタルデータの品質に影響がなくなってしまいました。お使いのデジタルカメラのSDカードを安物に交換しても、撮影したデータそのものは高級なSDメモリーカードを使ったものと変わりがありません。
デジタル処理は容易に国際標準化でき、国際標準化された信号処理が生まれると、その信号処理のための汎用電子部品を作る部品メーカーが世界中で勃興しました。そして機器の中で部品から部品へと伝わる信号のほとんどが共通規格化されました。その結果、世界中の部品メーカーが販売しているデジタル家電向け部品が「汎用品」となり、皆さんが日々手にしている家電製品の多くは汎用部品の組み合わせによって設計可能となってしまったのです。

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 今みなさんがお使いの携帯電話のほとんどはメインプロセッサ(SPU)とカメラをMIPI―CSI規格で接続されていて、同じくディスプレーやタッチパネルはMIPI―DSI規格で接続されています。
デジタル家電になる前は、カメラを接続して画像を撮影したいと思ったら、まずは「映像を撮影するための素子を作る」ところから手がけるか、あるいは「素子から出力される、そのままでは映像として扱えない複雑なアナログデータを処理するための仕組みを考える」ところからのスタートでした。
今はMIPI―CSIバスを備えたARMコア・メインプロセッサと、MIPI―CSIバス接続のカメラモジュールを手に入れれば、事が終わってしまうのです。どちらもインターネットの通販サイトで個人であっても手に入れることができる時代になりました。
デジタル家電化されたことで、デジタル家電内の信号処理が規格化され、それら規格に対応した部品を作る部品メーカーが多数勃興した。結果デジタル部品の組み合わせによって簡単に家電製品を作ることができるようになり、電気回路設計部ならびに組み込みソフトウェア部における工数が激減した、というのが最初のきっかけです。  次回はEMSとオープンソースについて取り上げます。

出典: 日経産業新聞 2016年1月7日掲載