日経産業新聞の連載「VB経営AtoZ」代表岩佐による第9回を掲載しました


日経産業新聞の連載コーナー「VB経営AtoZ」で弊社代表取締役の岩佐による寄稿第9回を、日経産業新聞の許諾をいただき転載いたします。本連載は5週おきに掲載され、次回の紙面掲載は12月1日の予定です。

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日経産業新聞連載「VB経営AtoZ」


takuma物流業務代行、ウェブで完結
越境超えるECサービス

前回はどうやって世界各地に散らばったニッチな需要に対して商品情報を提供していくかという広報・マーケティングの側面から話をしました。とはいえインターネットが普及するまでは、ルクセンブルグに住む人が弊社の商品情報を知ったとしても、よほどのマニアで日本に国際電話をかけて個人輸入でもしない限り、商品を手に入れる方法がありませんでした。

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 2016年のいまはこれが劇的にかんたんになった….と言うと、「電子商取引(EC)ですね」の一言で終わってしまうのですが、様々なECツールについて詳しい人はそう多くはありません。まず我々の業界で大きな革命となったのは、物流業務や顧客対応を代行する「フルフィルメント・バイ・アマゾン(FBA)」に代表されるウェブベースのフルフィルメントサービスの存在です。

通常のECでは、在庫品は販売業者の倉庫にあり、ウェブ上で注文が入ると販売業者にメールなどで通知が飛びピッキング(倉庫内で注文品を探して箱詰めする作業)と発送を行います。そのため販売業者は各国に倉庫を持たないといけませんし発送作業もそれぞれ委託する必要があります。毎月の発送数が少なければ、注文ごとの送料も高くなってしまいます。

フルフィルメントサービスの流れをFBAを例にして紹介しましょう。FBAでは、「アマゾン」が商品預かり(倉庫業務)、注文受け、ピッキング、発送全てを代行してくれます。ありがちな面倒な調整や交渉も不要です。ウェブに項目を入力し、利用規約に合意するのみで、一切の対面でのやり取りや電話もなく利用できるのです。

徹底した対面やりとりの削減は、FBA倉庫に商品を入庫する流れからもわかります。たとえそれが40フィートコンテナ2本(都心のマンション1室並みの広さです!)にもなる何千個もの、時価1億円もの商品であっても、ウェブ上の書式で個数とサイズや重量、品物の情報などを入力するだけ。次の画面で「これをパレットに貼り付けて送付してください」と記された伝票の画像が表示されておしまいです。

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 30年ほど前、通信販売で玩具を買いたいと言ったら「そんな怪しい仕組み、お金だけ取られて商品が送られてこないわよ」と私を諭した母にぜひ使わせてみたいものです。これが現在の越境ECを支えているシステムなのです。

他にも国際ECを支える新しいサービスは数え切れないほど登場しています。元グーグルのエンジニアが起業して作った米運送会社フレックスポートは航空便や海上便をオークション方式で安くオンラインで予約できますし、小規模事業者向けに配送業者をネットで手助けするサイト、シップワイヤー・ドット・コムは世界各国の倉庫をオンラインで借り、預けた在庫を自在に管理できます。モバイル決済の米ストライプはは自社サイトに世界各国からの多言語でのクレジットカード決済機能を埋め込むことができます。

似たようなサービスは日本国内にもたくさんありますが、グローバルに活用できるものはほとんどありません。海外発祥のこれらのサービスは展開範囲がまさに「グローバル」であり、Cerevoのように日本の小さな企業が世界55カ国以上で製品を販売していくにあたり、大きな力となっているのです。

次回は12月となりますので少し趣を変えて来年1月に米国で開かれる家電見本市コンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)について語ってみたいと思います。

 

出典: 日経産業新聞 2016年10月20日掲載